この記事を読むメリット
・小児~老年の体内水分割合がわかる
・小児が脱水に陥りやすい根拠がわかる
・細胞内液、外液の電解質について簡単に学べる
108回午後9問
成人の体重に占める体液の割合で最も高いのはどれか
1.血漿
2.間質液
3.細胞内液
4.リンパ液
正解は3の細胞内液です。今回は成人の体液割合について一緒に勉強していきましょう。
水分関連から、生理的体重減少も一緒に勉強しておきたい!という方はこちら⇩
体液の割合
まずは「体内水分量」について軽く触れておきましょう。
体内水分量とは、体の中にあるすべての水分の総称です。例えば…
・粘液
・汗
・尿
・不感蒸泄
などなど。体内に存在する水分はかなり細かく分類されます。
簡単に分類していきます。
・成人の場合、体内水分量は体重の約60%前後です。その60%のうち、40%が細胞内液、残りの20%が細胞外液です。
・細胞内液とは、「エネルギー産生やタンパク質合成を担い、細胞外液が不足した際はリザーバー(救助隊)の意味を持つ」
細胞内液が細胞外液の2倍あるのは、何らかの理由で細胞外液が著しく減少した時に、パパっと外に出て助けることができる予備の役割も担っているからなんです。細胞内液のおかげで、急な脱水や水分量の調整がされているといっても過言ではないでしょう。
・細胞外液とは、「細胞外液=組織間液15%+血漿5%」です。
組織間液は「栄養や酸素を細胞内液へ届ける+内液から老廃物を受け取り血漿へ送る役割」を持っています。

ちなみに…
体重の60%が水分なら他は何だと思いますか?
正解は、約20%がタンパク質、約15%が脂質、残りが無機質です。
体内水分量が占める割合は年齢により差があります。
多い順に小児(70~80%)⇨成人(60%)⇨高齢者(50~55%)となります。
細胞内液・外液の電解質の違い
結論から伝えます。
・細胞内液はカリウムが多い
・細胞外液はナトリウム、クロールが多い
体内にはいたるところにナトリウムカリウムポンプという構造があります。
これはナトリウムとカリウムを交換する機能を持っています。このポンプ機能により、体内の水分移動が行われていますよ!
「水はナトリウムと動く」
これさえ頭に入っていれば、細胞内液、細胞外液のどちらにナトリウムが多いか暗記する必要はなくなります。

ナトリウムの基準値は135~145mEq/L
カリウムの基準値は3.5~4.5mEq/L
下二桁が同じなので、そこから覚えましょう!
カリウムのうち90%が細胞内液にあります。腎機能障害で尿からのカリウム排出が障害されることで高カリウム血症となることがあります。
実は、カリウムは筋肉の収縮にかかわっています。このカリウムが基準値を大幅に超えると心筋に作用し、心不全を起こすことがあります。
基準値が小さな数字で収まっているものは、たいてい変動することでかなり重症化することがあります。
・細胞内液に収まっているカリウムが出てくる状況とは?
それは交通事故などにより外部からの刺激による細胞の損傷です。細胞が損傷することでカリウムが血管内へ移動し、心不全を起こすことがあるのです。
他にも「クラッシュシンドローム」、別名:圧挫症候群と呼ばれる、地震などで倒壊したがれきの下に足が挟まるなどして、血流がとまり、筋肉が損傷することで血管内へのカリウム放出が起こる状態もあります。頭の片隅に入れておきましょう。
乳幼児は脱水になりやすい
乳幼児の体重に占める体内水分量の割合は70~80%と説明しました。
乳幼児の特徴でもあるこの水分量は、時として容易に脱水を繰り返すことがあります。乳幼児は下痢、嘔吐、哺乳不足などにより体内の水分量が著しく変動しやすいです。
月齢や体重により細かく水分量が決まっているのはこれが要因です。
主な原因はこちら⇩
・体温調整機能が未熟
・腎機能、発汗機能が未熟
・下痢や嘔吐が頻回に起こりやすい
・感染症にかかりやすく、体内からの水分排出が成人より多い
一日に必要な水分量
新生児:60~80ml/kg
乳児:100~120ml/kg
幼児:80~100ml/kg
学童:60~80ml/kg

さらに細かく補足するなら…
新生児は細胞内液が35%、細胞外液が45%と成人と比べて差があります。
つまり、水分移動しやすい割合が増えるため、容易に脱水に陥ります。
新生児や乳児の勉強をべんきょうしたい方はこちらも一緒にどうぞ⇩
まとめ
国試問題で体内水分量の問題を作るとしたら
・成人
・小児
・老年
というパーセントの違いや起こりやすい症状、細胞内液・外液のパーセント、浸透圧など広く知識が求められます。
決して暗記問題にしないように気を付けて下さい。
「過去問でもみたからこの問題はわかる、パスしてもっと難しい勉強をする」
という選択をとる学生が多くみられます。
基礎知識として重要な部分を除いて、応用問題ばかり取り組んでも、その場しのぎの点数しかとれません。時間があるときに、しっかりと基礎を勉強して、応用問題へ進みましょう!
一緒にこちらも勉強しませんか?
以上!