この問題を通して患者の心理状況把握の思考を学べます。倫理観や精神状態など数学のようにイコールで結びにくいものは感覚を鍛えなければいけません。そのためには、適切な思考ができるように鍛えていきましょう。
107回午前31問
排泄行動が自立している入院中の男性高齢者が、夜間の排尿について「夜は何度もトイレに行きたくなります。そのたびにトイレまで歩くのは疲れます」と訴えている。
この患者の看護で適切なのはどれか
1.おむつの使用
2.夜間の尿器の使用
3.就寝前の水分摂取の制限
4.膀胱留置カテーテルの挿入
正解は2の夜間の尿器の使用です。

このような問題は回答を覚えても意味がありません。
なぜこの選択肢を選んだのか、他の選択肢がなぜ間違っているのか、優先順位を付けられるのかを勉強していく必要がありますよ!
注目は自尊心
注目すべきは患者の自尊心、そしてニーズや心理状態についてです。まずは自尊心について考えていきましょう。
そもそも自尊心とは…
自尊心(セルフリスペクト):己の価値を認める自己評価で、自分の価値や存在意義を位置づける感情のこと。自身の品格や価値を落とすような行為には嫌悪感を持つ。
プライドと変換した方が覚えやすいかもしれませんね。
重要なのは、自尊心は本人の意識に依存することです。自分がいいと思えば上がり、悪いと思えば下がる。とても単純ですが、その思考には他人からの言動、環境などが大きく要因として挙げられます。
選択肢を見ていきましょう。
1.おむつの使用

トイレ行くの面倒だな…でも尿意が限界だ
この患者におむつを使用させようと声をかけてみてください…確実につけてもらえませんよね。
「なんで俺がつけなくてはいけないんだ!おむつは漏らす人がつけるものだろう!」と怒られることでしょう。
なぜ怒るのでしょう?
それは自尊心を傷つける行為だからです。
・尿意はある
・トイレに行きたい意欲はある
・トイレまでの移動が困難の訴え
つまりおむつをつける必要が必須ではないのです。おむつや選択肢4の膀胱留置カテーテルなどは最終手段と考えてください。排泄系で訴え=おむつという安直な発想はやめましょう。患者の自尊心を傷つける行為は、その後自尊心を回復させるのにとても困難になります。
次に選択肢3の水分の制限ですが、基本は「疾患により制限されない場合を除き、不要な制限をなるべく設けないこと」となります。
腎障害などにより水分の制限がされている場合は当然制限をかけますが、この患者は尿意を訴えることができ、夜間の尿失禁という記載もありません。あくまで「排泄行動」ではなく「移動困難」の訴えであると認識しましょう。
移動困難のニーズに合い、患者の自尊心を最小限に抑えることができるのは2の夜間の尿器の使用ですね。

ニーズと心理状態の調整
選択肢2の重要ポイントは「夜間」の尿器使用であることです。
・高齢者であること
・移動回数が多くなること
・移動により疲労がたまること
これらを考慮して、夜間と限定しています。

日中も使用ではだめなんですか?失禁リスクや歩行時の転倒転落のリスクがあると思います。
たしかに一理あります。ですが、患者の安全安楽の維持とは別視点で、自尊心はありあます。
・排泄はすべて尿器にする
・日中ナースコールをして移動補助についてもらいながらでも一人でトイレで排泄する
どちらがいいですか?
さっきまではトイレに行ってた人が
「では今からすべて尿器に変えますね。」と言われてどう思いますか?

確かに疲れるけど、いけないこともないし…
いきなり尿器だけ渡されても出なくなるかもしれないし。そもそも歩いていけてるのだからなんで全部尿器に変えなくてはいけないの?
思考内容な異なってもいい思いはしないでしょう。0か100かで考えるのではなく、患者のニーズ、持てる力と安全安楽の視点から解決策を見つけることが大切になります。
トイレに行くと疲れる➡なら尿器
と思考停止した看護を提供しないように気を付けましょう。
はじめに記載しましたが、心理状態や持てる力、自尊心など様々な因子がある中での選択肢になります。数学の予ようにイコールで結んで覚えないようにしましょう。
まとめ
このような患者視点にたって思考の予想をすると倫理問題、心理問題からくる国試は解きやすくなります。解剖のように暗記したらそこで終了ではなく、日々問題に触れることで養っていくものになります。
思考を育てるのはとても難しいです。時間もかかります。
ただし、一度思考を正しく作れればたちまち消去法からサービス問題に早変わり!
とにかくサービス問題を落とさないようにしましょう。
以上!
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