この記事を読むメリット
・ゴードンの11の機能的健康パターンを順に学習できる(後半)
・具体例でアセスメントと情報収集の違いを復習できる
前回の記事の続きとなります。健康知覚・健康管理~活動・運動まではこちら⇩
それでは早速見ていきましょう。
睡眠・休息
睡眠・休息はその名からとても分かりやすいと思います。
項目はこちら⇩
・睡眠時間→平均時間、入院前、入院後の睡眠サイクル
・入眠→困難の程度、変化
・中途覚醒→原因の特定(排泄、悪夢など)
・熟睡感→深い睡眠がとれているのか、眠れた感覚はあるか
・日中の状態→うたたねの有無、ぼーっとする、瞼が閉じやすい
・睡眠導入剤の有無→薬剤の副作用の有無、程度
・覚醒→すぐに覚醒するか、二度寝などの癖があるか(異常の早期発見)

睡眠の情報収集自体はさほど難しくはありません。
しかし、失神やめまい、意識混濁や消失など「通常時」の情報がないと早急に判断できません。
「いつもと違う」という違和感を目つけるために、日ごろから患者の性格や状態をインプットしておきましょう。
気になったらホウレンソウですよ!
睡眠は意識の判断で必須になります。
副作用なのか、眠れていないのか…といった「原因となりそうなこと」を意識しておくことで、倒れているのか寝ているのかを瞬時に判断できるようになります。これは経験で培うため、学生のころから机上で勉強しておきましょう。
具体例
S:最近お昼に眠くなってしまって…
O:日中に睡眠していることあり、2~3時間→薬の副作用の確認や移動時のリスク
S:夜中に目覚めてしまいます
O:夜間覚醒2回あり、ナースコールにて「幽霊が追いかけてくる」と発言あり→悪夢にて起きているため、副作用の確認、トラウマや過去の体験などのアセスメント

認知・知覚
ここから一気にイメージがつかみにくい内容になります。睡眠と認知ではイメージの差が人によりまばらになりがちです。
認知・知覚といえば…「五感」が代表的です。
認知:これはこれだと認めること。これが何かを判断したり解釈したりすること。
知覚:感覚器官を通じて外界の物事をとらえること。
これだけでは正直イメージがあいまいすぎます。イメージを固めていきましょう。
項目はこちら⇩
・視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚→一般的な発達と異なる部分はないか、注意すべき点はないか
・痛覚の状態→圧痛の有無、麻痺の有無
・記憶力→短期記憶、長期記憶、疾患による記憶障害の有無、エピソード記憶
・疼痛コントロール→痛みの訴えができるか
・意思決定の有無→正常な思考で意思決定できる判断能力を有しているか、話せるか、文字盤などで意思表示ができるか

あまり難しく考えないようにしましょう。
五感と認知症などで勉強した見当識についてが入る!くらいのイメージを持っていると整理しやすくなります。
S:別に体のどこも痛くありゃせんよ…?
O:仙骨部に褥瘡あり、創部も含め鎮痛剤投与なく、疼痛訴えなし→疼痛が認知していないリスクからアセスメント
S:朝起きたら耳が聞こえにくくなっていてね。
O:両耳に補聴器なし、常につけているが落としたことに気づいていない→常につけている必要性、起床後のルーティンの確立アセスメントなど
自己知覚・自己概念
自己とつくだけで一気に難易度が上がる気がしませんか?
自分についての考え、思いといったイメージを持ってから項目を確認していきましょう。
項目はこちら⇩
・ボディイメージ→実際の体形ではなく、本人のとらえる体形について
・能力の自覚→職業柄〇〇するのが得意、××が苦手という考え
・アイデンティティ→自分らしくいるための思考、行動
・情緒→パターン、日常的な感情の起伏の程度
・疾患による自己知覚の変化→体形が変化する、見た目が変化する、本人の考える「普通」からの変化に対する反応

少し国語のレベルが上がりました…
ここで重要なのは「看護師」からみる一般論ではなく、「患者」からみた考えです。
太っていることを気にしているかもしれない…ではありません。患者の背景で、太っているほうが幸せかもしれませんし、これくらいがちょうどいいと思っているかもしれません。
不用意な発言、すれ違い発言を減らすことにもつながるので、「患者自身がどうとらえているか」をアセスメントしていきましょう。
疾患によっては社会背景がとても大切になることがあります。逆に、全く関係ない疾患において必要以上に情報を聞いても全体像や看護計画に全く必要ないこともあります。
その情報は本当に必要ですか?
どんなアセスメントをする際にその情報は必要なりますか?
質問のきき方によってはトラウマを引き出したり、答える気をなくすこともあります。質疑応答にならないこと、事前に聞きたい情報はリストアップしておくことが大切です。これも過度な干渉を避けるための看護といえるでしょう。
S:ずぼらな性格なので、薬を毎日決まった時間に飲むのは厳しいです。
O:年齢相応の判断力を有しており、入院前は自宅にて服薬できていた→看護師が服薬の管理をしてもいいのかというアセスメント
S:僕はどうしても薬を飲みたくない
O:服薬時間になると怒ったり、泣いたりする→対処法についてアセスメント

役割・関係
役割・関係は簡単な単語です。まずは患者の立ち位置(居場所)を明確にした状態で、家族・社会・その他と分けて分類するとアセスメントする際に簡単になりますよ。
項目はこちら⇩
・職業→職場の立場、交友関係
・社会役割・関係→町長や会社の役員、責任関係の移譲(後輩へ仕事を任せられるか)
・家族内役割→父、母、長男、稼ぎ頭、家事
・経済状況→家庭内の働く人数、入院通院への影響、責任

家族内での役割は比較的わかりやすいですが、仕事(社会)についてはアナムネでおおよそしかとっていないことがほとんどです。
全体像を把握する上で必要な情報なのか、無駄に質問攻めになっていないかにも注意しましょう。
S:早く仕事に戻らないといけない。私のやる仕事が残っている。
O:会社では部長の立場、後輩に任せることを嫌う→仕事の譲渡まで介入しないほうが正しいか、入院期間を短縮するために何かできるのか、アフターケアはどうするかのアセスメントにつながる
S:子供に何もしてやれない
O:父親という立場。仕事三昧で子どもの面談を断っている→子どものためになること、オペや療法の決断能力が支援される可能性(子どもがいるから頑張れる)
性・生殖
性・生殖も基本的にはとても分かりやすい項目ですが、聞き方によっては心を閉ざしかねません。どこに注意すればいいか、踏み込みすぎないことなど気を付けましょう。
項目はこちら⇩
・年齢→一般的な年齢における変化
・性別
・更年期症状の有無→女性特有のホルモンバランス、服薬による変化
・世帯→子どもの人数、親の有無
・生殖機能の有無→年齢で把握、疾患による生殖機能への影響(子宮がんなど)
・LGBT→患者本人の自覚する性、性別特有のホルモンバランスと影響

LGBTなど、性には答えにくい質問、聞かれたくない質問が多くあります。
さりげない会話の中から情報をつかみ取る能力も必要です。
また、患者を不愉快な気分にさせないこと、固定観念のため予測に近いアセスメントに変えない事(男だからこうあるべきだなどの決めつけ)
近年、性についての寛容さが社会に出てきたものの、いまだ自主的な発言を控えている人も大勢いると予想されます。
患者のニーズは「看護師の一般常識と一緒なのか」という自問自答が大切になります。
女性だから家では家事をしているはず、男性だから働き続けて当然、子どもだから学校に行っていて当然。
このような枠組みに当てはまらない人には深刻なダメージを与えかねないため、質問の仕方にも気を配りましょう。
Qお子さんは元気ですか?→子供の話を患者からしてきたら聞ける
Qお子さんは学校ではいつも明るいですか?→患者が学校について話していない最中はうかつに聞けない
そんなこと言ったら何にも聞けない!と思う学生もいると思いますが、「情報収集のために患者を傷つける」理由にはなりません。
〇〇という理由で質問を控えました、カルテからの情報に頼った理由は〇〇です、としっかりとした意見を持っていれば看護師・教員も配慮すると思います。
患者ファーストです。
S:もう一人子供が欲しいけど、難しいかな
O:子宮がん、摘出手術を控えている→悲嘆への傾聴、同じ立場の会への紹介が必要か、夫婦の話す時間を置くべきかなどのアセスメント
S:最近イライラする。リハビリも行きたくない、すぐ暑くなる。
O:50歳のため、更年期症状があり。リハビリ意欲低下→更年期症状の理解、促す方法のアセスメント

コーピング・ストレス耐性
「ストレスはわかるけど…コーピングって何?聞いたことない」
という学生も多いはず。
コーピング:ストレス反応への対処方法のこと。問題焦点型と情動焦点型がある。
少し勉強した人ならこんな質問があるのではないでしょうか?
Q防衛機制とコーピングは同じなのではないか
A違います
防衛機制とは「無意識のうちに対処する情動の変化」を説明している反面、コーピングは「意識的に対処する情動の変化」となります。
防衛機制について詳しく勉強したい方はこちら⇩
項目はこちら⇩
・家族・友人のサポート環境→面会や血縁者との関係の良さ
・通常時のストレス発散法→趣味やスポーツ、娯楽など
・入院時のストレス発散法→現在できていること、していること
・入院環境→患者からの不平不満、言動
・状況判断能力の程度自分がストレスを感じているのか否かわかっているか、言葉にしたり気持ちの表出ができているか
・主なコーピングパターン→ストレスを感じたら出やすい行動、情緒の流れ(簡単に言い換えるとストレスを感じた時の性格:怒る、愚痴る、寝込むなど)

性・生殖と同様に、かなり深入りしやすい項目になります。
聞けない、聞いてもわからなかったのなら、それでもいいです。その結果からアセスメントしましょう。
学校で出される事例と患者ではとれる情報量に差が出るのは当然です。経験を積むことで、会話の中からつかみ取れる技術が身についていきますよ!
S:入院前はランニングしていたけど、骨折してからはいけてないな
O:日中ベッド上に居続けることが多い、リハビリも消極的→ベッド上でできる趣味や活動がないか、可能であれば寄り添って話を聞いてみることも考慮
S:どうも隣の部屋がうるさい
O:幻聴なし、隣室は頻回に夜間せん妄あり→部屋の移動、多床室なら場所の移動など可能か確認。ほかに照明やなどもストレッサーになっていないかアセスメント
価値・信念
最後の項目になります。日本人はほとんどの人が無宗教だったり、形だけ〇〇宗、家が〇〇宗といった方ばかりです。その点を踏まえると、価値や信念では、宗教以外のアセスメントが主になってくるかと思います。
項目はこちら⇩
・信仰の有無→宗教により可能なこと、不可能なことを把握すること。また、何か検査の際に確認するアセスメント
・信念→心に決めた固い意志があるか(例:絶対に朝ご飯は食べない。絶対に運動するときはこの服に着替える)尊重可能かどうか、できない場合の対処法アセスメント
・輸血が可能か→医療機関と患者の間でトラブルが起こった事例もある。必ず施術前に確認が必要

価値・信念はそこまで項目が多くありません。
宗教上の理由や、絶対的な意思がない限り、ほとんど白紙に近いアセスメントになることもあります。
ただし安心してはいけません。
イスラム教の禁止事項は?
キリスト教の禁止食材は?
ヒンドゥー教の習慣とは?
こういった豆知識のような知識が必要になることも働き始めると出てきます。牛や豚の肉は当たり前ですが、礼拝の回数や特有の習慣などは難しいです。一つずつ覚えていきましょう。
S:どんなときも輸血はしないでください。天国へ行けなくなってしまいます。
O:オペでは3割ほど輸血のリスクあり→医師と相談、家族と相談、セカンドオピニオンなどを用いて、患者に意思決定しやすい環境を整えるアセスメントが必要

まとめ
ゴードンの看護過程展開は学生時代に必ず通る道です。参考書によって意見が変わったり、教員によって意見が変わることもあります。
ただし、全体像にまとめるべき点はいつもマズローの5段階に一任されやすいです。生理的欲求が満たされていないまま安全の欲求を満たしても結果は変わりません。必ず下から欲求を満たしているかどうかの判断をしていきましょう。
以上!
